ひとひろ

日常より、もう少し深いところへ。ひびのこと、たびのこと、ならのことを綴ります。

*奈良は逃げない

年度末は仕事が忙しさを増す。
分かってはいたはずなのだけれど。

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今年の私は一味違う。
なんてったって、奈良県民になったのだ。
今までは行けなかったイベントだって行けるし、四季折々の香りを楽しむことだってできる。
春の宵、花の香をかぎながらゆるやかに散歩をするなんて考えただけで、頬が緩んでしまう。
そんなふうに、楽しいことを考えてはしゃいで、いつしかスケジュールはぎっしりと詰まっていた。

毎週末、いや、毎日奈良を楽しめる。
私は完全に浮かれていた。

そして迎えた、3月。
職場でやるべきことも、責任も少しずつ増えはじめている。
やってきた繁忙期は、予想以上に目まぐるしいものだった。
うまくガス抜きができない私。
とにかく目の前のことしかできないし、物事や時間の管理も苦手だ。
ただ、真面目さだけを取り柄にやってきたから、なんだかうまく対処できていない。
毎日てんてこ舞いで、朝夕へとへとで電車に乗る生活が続いている。
ましてや、奈良県民になったというのは、結婚して新しい生活をはじめたということに等しい。
夫の献身的な支えでもって、ようやく生活が回っているような状態だった。

そしてとうとう。
ぷつん、と糸が切れた。
何をしたらいいのか、分からなくなった。
とにかく的外れに、視界に入ってきたことに手をつけた。
あれ、こんなはずじゃ、なかったのに。

週末はもちろん楽しいものだ。
奈良のことだって全力で楽しんでいる。
仕事も嫌いではない。
でも、どんどんぬかるみにはまっているような感覚があった。
ぼろぼろ泣きながら、どうしようと言ってうずくまった。
たくさんの「やりたい」……いや、「しなければならない」が、私に絡みついて首を絞めている。
こんなはずじゃ、なかったのに。

「休みなさい、休憩しなさい」
一番の理解者であり、一番の被害者はそう言った。

「奈良は、逃げないから」

これから何年も何年も、暮らしていく場所。
1300年続いてきた場所が、明日突然なくなってしまうなんてことは、万にひとつでもないだろう。

新年度に向けて、新しいことを覚えることにした。
自分を大切にすること、休むこと。
奈良をもっと愛するために、まずやるべきことがある。

奈良は、逃げない。
どうかゆっくり、待っていてほしい。

ゆのじ