ひとひろ

日常より、もう少し深いところへ。ひびのこと、たびのこと、ならのことを綴ります。

ひとひろ

*下書きが苦手というだけの話

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幼いころからずっと、絵を描くのが好きだ。
特に学生時代は毎日のように白い紙をらくがきに費やしていた。
社会人になり、忙しくなってからは描く機会は随分と減ってしまったけれど。
それでも電話の保留中など、手慰みに無意識にペン先はストロークを描いている。

昔は、ペン入れや清書が苦手だった。
持ち前の完璧主義はここで作られたのかな、とふと思う。
やり直しのきかないペンでの作業は、失敗すると「全部だめ」になってしまったようで。
ぐしゃぐしゃと紙を丸めてしまったことも、枚挙に暇がない。
だからこそ下書きを緻密に、しっかりとすることが好きなのだと、長年思っていた。
性格としては、石橋を叩いて壊すタイプの慎重派、なのだと。

最近、気がついたことがある。
私は、下書きの方が苦手だ。
モノを作っているときの私はわくわくして頭がぐるぐると回転していて、エネルギーが巡っている。
そういうときは正直、下書きなんてまだるっこしい。
早く、この溢れてしまいそうな何かをどうにかしたい、そんな一心なのだ。

それは最近の画風にもあらわれている。
何年ぶりかに、イラストを描いた。
塗りたくて描きたくて表現してしまいたくて、下書きは適当に歪んだストローク。
もはや何を描きたいのかは、私しか分からない。
そして淡く透明度の低いペンで、どんどん重ねる。
見えてくる輪郭、あらわされるイメージ。
あ、こっちの方が好きなんだ、と完成してから腑に落ちた。
この描き方なら、何度でも重ねることで、形を整えることができる。
ひとつ失敗したからハイ終わり、とはならない。
ずっと自分の白黒つけたい(本当は中途半端な)完璧主義ぶりに悩んでいたけれど、思っているよりも私はゆるく、なってきたのかもしれない。
なんだか、嬉しくなった。

慎重派のビビリのくせに、時折よく分からないエネルギーを発揮することがある。
もしかしたらこれが、本当の私、というやつなのかも。
このエネルギーを色々なことに活かせたら、もっともっと、楽しいはず。
つくることが、やっぱり好きだ。
まだまだ新しい発見が、明日の方向にはたくさん転がっているのだろう。
きっちり計画された下書きはほどほどに、自分の思うように未来とやらを描いてみたいと思う。

ゆのじ